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  アボサンinfo.いろいろ思索いろいろ雑感 
 阿保美代さんの作品に
 ◇ 引用された詩や歌 
 阿保さんの作品の中で、引用されている詩や歌を簡単にまとめてみた。 ここでは、'77年〜83年の6冊から。少し場面の状況も添えておいた。



上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品

 「ふたつ ふじには ゆきだとさ みっつ みかんは みかんいろ
   よっつ よなかは もうさむい いつつ いちょうは きんのいろ
    むっつ むくどり なきだして……」

 「秋のかぞえうた」 作詞/ふじたあさや 作曲/岩代浩一  
  ※囲炉裏端でお婆さんがお手玉をしながら狐と一緒に歌う。
「きつねのくりごはん」(ふるさとメルヘン p.8)  


上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品

 「La La La  赤いはなたば くるまにつんで 春がきたきた おかからまちへ」

 「春の歌」 喜志邦三作詞  
  ※嫁入り前の村の女性が、町からの客人の赤いハイヒールを内緒で履き、舞い歌う。
「あかいくつ」(ふるさとメルヘン p.71)  


上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品

 「あかいくつ はいてた おんなのこ
    いじんさんに つれられて いっちゃった いっちゃった……」

 「赤い靴」 野口雨情作詞  
  ※少年が草むらで赤い靴を発見して泣いているラストシーンの背景で流れる。
「あかいくつ」(ふるさとメルヘン p.74)  


上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品

 「手を とりあって そこへいこう ………… 
   ごらん そんなに 遠くはないよ
    さあ ここから出かけよう わたしの恋人よ」

モーツァルト作,歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より。訳詩・武石英夫  
  ※長く帰らない夫を待つ妻。町中で夫に似た浮浪者がアコーディオンを奏でて歌う。
「秋の日のアリア」(ふるさとメルヘン p.169)  


上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品

 「風に糸杉の影 のこしていく叫び声
   ぼくをほっといてくれ この畑で泣かしてくれ
    ものみなこわれてしまった のこるは静寂だけ」

ロルカ詩集 「アーイ!」(長谷川四郎訳)より  
  ※木々が風に揺れる静かな村。旅人の青年が丘の上でこの詩を想い出す。
「風の村」(お陽さま色の絵本 p.11)  


上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品

 「ひとつの気持ちを もっていて 暖かくなったので 花が咲いた
   その気持ちが そのまま よい香(にお)いにも なるのだろう」

 「八木重吉詩集」(彌生書房刊) 「梅」より  
  ※静養で村にきた乙女。少女と原っぱで花を摘みながら、この詩を教える。
「ひつじぐさの夢」(時計草だより p.146)  



 以上、全6つ。この作業の中で、またしても発見をした。「秋の日のアリア」が秀作だった。

 さて、引用の表記はページの枠外に書いてあるので、見落としがあるかもしれない。 6冊以外に、'87年の「夏のてじな」もざっと確認したが、見つからなかった。

 阿保さんは若い頃から、色んな詩集を読まれていたのだな、と思う。 これはその極一部だろうし、様々な本や芸術から良いものを吸収しておられたのだろう。 ご自身の中で消化されているから、ペダンティックな感じもなく、物語の中に自然と出てくるのがいい。

*    *    *

 当然、アボサンの書かれた詩や歌にも素晴らしいものがある。 「ふるさとメルヘン」の中の、伝承歌をアレンジしたものも良いし、 「時計草だより」に出てくる様々な歌、例えば、 「アンダンテ・カンタービレ 〜 春の夢はどこまでつづくのでしょう」(p.37)なども好きだ。

 そして「ぴあの」の猫の心の声、「やさしい音が〜」。 「楓ッコ」の、「いっとうひどいことをしてやろう〜」に続く想像を越えたモノローグ。 くずの葉だより所収の「千とひとつの物語」「月街ものがたり」にも良い詩がある。

 アボサンは、'70年代〜80年代前半には、その道一流のものにも届きそうな、 優れた詩を書かれていた。 それは今読んでも少しも色褪せていない。




2010-09-04
著者:ライラック


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