阿保さんの作品の中で、引用されている詩や歌を簡単にまとめてみた。
ここでは、'77年〜83年の6冊から。少し場面の状況も添えておいた。
上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品 |
「ふたつ ふじには ゆきだとさ みっつ みかんは みかんいろ
よっつ よなかは もうさむい いつつ いちょうは きんのいろ
むっつ むくどり なきだして……」
「秋のかぞえうた」 作詞/ふじたあさや 作曲/岩代浩一
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※囲炉裏端でお婆さんがお手玉をしながら狐と一緒に歌う。
「きつねのくりごはん」(ふるさとメルヘン p.8)
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上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品 |
「La La La 赤いはなたば くるまにつんで 春がきたきた おかからまちへ」
「春の歌」 喜志邦三作詞
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※嫁入り前の村の女性が、町からの客人の赤いハイヒールを内緒で履き、舞い歌う。
「あかいくつ」(ふるさとメルヘン p.71)
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上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品 |
「あかいくつ はいてた おんなのこ
いじんさんに つれられて いっちゃった いっちゃった……」
「赤い靴」 野口雨情作詞
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※少年が草むらで赤い靴を発見して泣いているラストシーンの背景で流れる。
「あかいくつ」(ふるさとメルヘン p.74)
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上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品 |
「手を とりあって そこへいこう …………
ごらん そんなに 遠くはないよ
さあ ここから出かけよう わたしの恋人よ」
モーツァルト作,歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より。訳詩・武石英夫
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※長く帰らない夫を待つ妻。町中で夫に似た浮浪者がアコーディオンを奏でて歌う。
「秋の日のアリア」(ふるさとメルヘン p.169)
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上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品 |
「風に糸杉の影 のこしていく叫び声
ぼくをほっといてくれ この畑で泣かしてくれ
ものみなこわれてしまった のこるは静寂だけ」
ロルカ詩集 「アーイ!」(長谷川四郎訳)より
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※木々が風に揺れる静かな村。旅人の青年が丘の上でこの詩を想い出す。
「風の村」(お陽さま色の絵本 p.11)
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上段= 詩歌・作詞者の表記 / 下段= 場面状況・掲載作品 |
「ひとつの気持ちを もっていて 暖かくなったので 花が咲いた
その気持ちが そのまま よい香(にお)いにも なるのだろう」
「八木重吉詩集」(彌生書房刊) 「梅」より
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※静養で村にきた乙女。少女と原っぱで花を摘みながら、この詩を教える。
「ひつじぐさの夢」(時計草だより p.146)
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以上、全6つ。この作業の中で、またしても発見をした。「秋の日のアリア」が秀作だった。
さて、引用の表記はページの枠外に書いてあるので、見落としがあるかもしれない。
6冊以外に、'87年の「夏のてじな」もざっと確認したが、見つからなかった。
阿保さんは若い頃から、色んな詩集を読まれていたのだな、と思う。
これはその極一部だろうし、様々な本や芸術から良いものを吸収しておられたのだろう。
ご自身の中で消化されているから、ペダンティックな感じもなく、物語の中に自然と出てくるのがいい。
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当然、アボサンの書かれた詩や歌にも素晴らしいものがある。
「ふるさとメルヘン」の中の、伝承歌をアレンジしたものも良いし、
「時計草だより」に出てくる様々な歌、例えば、
「アンダンテ・カンタービレ 〜 春の夢はどこまでつづくのでしょう」(p.37)なども好きだ。
そして「ぴあの」の猫の心の声、「やさしい音が〜」。
「楓ッコ」の、「いっとうひどいことをしてやろう〜」に続く想像を越えたモノローグ。
くずの葉だより所収の「千とひとつの物語」「月街ものがたり」にも良い詩がある。
アボサンは、'70年代〜80年代前半には、その道一流のものにも届きそうな、
優れた詩を書かれていた。
それは今読んでも少しも色褪せていない。
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