先のものに続いて、「アボサンのふるさとメルヘン」の他選集も、まとめてみた。
300ページ迄、と制限が緩いため、数作抜いただけで、ほぼ同1〜2巻そのままに近い。
外したのは、1巻からは「あじさい峠」と最後の「雪のこねこ」以降の5作、
2巻からは「虹の町から」と「メロウ・フォーカス」以降の2作。
「メロウ~」は良作だが、都会的すぎて「ふるさとメルヘン」的でないため。
また、「わすれんぼの天使」も、
どちらかと言えば西欧風のメルヘンで、『他選集(1)』の方が合うが、そのままこちらに入れた。
ところで、この作業をしていて、つくづく私は、まともに阿保作品を読んでいなかった事が分かった。
同時に、阿保さんの作品は、ゆっくり味わうと、ちゃんと応えてくれる十分な深さがあることも知った。
ともかく、以下が私の選んだ作品リストになる。
* * *
☆ 阿保美代・他選作品集 [2] (仮) 〜アボサンのふるさとメルヘン〜
タイトル | 頁数 | 備考 (登場人物など) |
きつねのくりごはん | 8p | 婆さま、きつね、息子 |
雪の里 | 8p | 少年、女性、父親 |
こぐまの春 | 8p | こぐま、少女 |
小鬼のてぶくろ | 8p | 小鬼、少女と母 |
たぬき雨 | 8p | たぬきの親子、猟師 |
菖蒲沼 | 8p | 沼に棲む河童、少年と父親、庄屋 |
泣き虫たんざく | 8p | 兄と、妹マー、友達 |
あかいくつ | 8p | 少年と、向かいの家のお姉ちゃん |
西の風のうた | 10p | 歌好きの少年、ばっちゃん、父母 |
てのひら10月 | 8p | 娘、母、くすり売りのおじさん |
月うさぎ | 8p | 少年ひろ、少女ふみ |
もみじ山のやまんば | 8p | やまんば、幼い少年、里の村の衆 |
古い波のうた | 8p | 青年の太一、おなごわらし |
花の木橋 | 8p | じっちゃん、林檎の木、孫の少年 |
すぎのこ森の声 | 8p | 炭焼きの夫婦 |
春の笛 | 8p | 少年、学校の先生と児童、うぐいすの精 |
あめふりてんぐ | 8p | 天狗、庄屋と娘、雨蛇 |
水ばしょうのらっぱ | 8p | 寺の和尚、小僧、少女 |
※以上「ふるさとメルヘン(1)」から146p、ここまで合計 146p |
かやぶき峠の鬼 | 8p | 菩薩彫りの青年、鬼の女 |
すずめのお宿 | 8p | 少年ひろ、すずめのスー、学校や家族 |
真夏に真綿の雪がふる日 | 8p | 少女あや、妹、母 |
田の草かかし | 8p | 吾作どん、かかし、すずめ |
10月のあまんじゃき | 8p | 少年つとむ、学校の先生・児童 |
花咲かぬ森の盗人たち | 8p | 7人の盗人、長者、孫、山の地神 |
おろろんぎつね | 8p | 青年ケイ、きつね、亡き妻の沙羅 |
ジロー・メルペリウスの話 | 8p | 青年ジロー、隣の爺と女性ハナ、地霊 |
やまびこ太郎 | 8p | 機織の少女、笛吹きの青年 |
野いちご村の花絵師たち | 8p | 花の精の村の衆、人間の少女 |
わすれんぼの天使 | 8p | 青年、猫、管理人の女性 |
赤い実 白い実 | 8p | 熊の子、熊、ウサギや動物たち |
聖ゆきぼうし | 8p | 娘、母親、父親 |
春のないしょ話 | 8p | 少女の京ちゃんとヒロちゃん |
花かがり | 8p | 少年風太と少女モモ |
月の光を紡いで | 8p | 農家のゴロさん、月の子 |
楓ッコ | 8p | 峠の茶店の少女、反物屋の青年 |
赤いはさみと銀の鈴 | 8p | 漁師サム、縫い物上手な女性ちどり |
羽衣てらんこ | 8p | 少女と両親、橋を立てる鬼、人柱の娘 |
※以上「ふるさとメルヘン(2)」から152p、ここまで合計 298p |
以上になる。今回、ゆっくり読むことで、真価が分かった作品が幾つもあった。
1巻では、特に「こぐまの春」が、大変美しい話だった。鳥肌が立つようだ。絵もストーリーもキャラクターも。
特に24p〜25p、少女の繊細な表情の変化や、春の扉が開く美しい場面、その発想、そしてこぐまの言葉のリフレインまで、素晴らしい。
ラストシーンをどう捉えていいのか、私には分からなかったが。
「西の風の歌」も、心にサーッと切ない風が吹くようなドラマだ。
こうした作品を描けるのが阿保さんの力だと思う。
「てのひら10月」、自然の描き方が素晴らしく、人にも話にも陰影と厚みを感じる。
「月うさぎ」もまた同じく。
2巻は、最初の「かやぶき〜」から、心に響く上質な作品がつづく。
どこに出しても通じそうな、多彩でセンス溢れる作品群。
機織の少女の話を描いた「やまびこ太郎」が、「楓ッコ」に似た雰囲気の、
質的にも並ぶ秀作だと初めて分かった。
(タイトルで損してる?)
* * *
さて、しかし、2巻の途中の「野いちご〜」あたりから、砂糖菓子のような甘いメルヘンになってくる。
端的な例は同作で、人間の里に返すべき少女を、戻さず曖昧な形で終わる。
それはそれで感じるものはあるが、
この辺りから、物語の途中は良くても、肝心の詰めが甘くなっていくように見える。
以降、絵や会話は魅力的だし、ハッピーエンドのメルヘンではあるが、
鋭く人生の機微や真実を映し出す、という要素は減ってくる。
その後、「楓ッコ」「赤いはさみ〜」「羽衣〜」あたりで再びそれは戻るのだが、
これが最後の強い輝きだったのかもしれない。
これもまた、今回読んでいて気づいたことだった。
* * *
かくして、阿保さんの作品の価値を、様々に実感することになった。
やはり、アボサンの心がこもった作品は、今も衰えることなく、読むたびに、発見や、伝わってくるものがある。
そうして自分の中の珠玉作が増えていく。
この選出作業は、そうした点でも、ファンの方にこそお勧めしたい。
|