阿保ワールドのインテリア。
特徴的で私が好きなのは、食卓の上。
ティーセット(ティーポットとカップ&ソーサー)、小さな花瓶に入れたお花、
そこに、ケーキやクッキーがあったりする。それがすごく好き。
また、ガラス製品がよく置いてあって、
ガラスの器に野の花が挿してあるのがよく出てくる。
これは大事なポイント。
これが温かみや、生活感、ナチュラルな雰囲気を出しているのだと思う。
「10とひとつの物語」より (©阿保美代 1980/講談社)
この小物がいちいち可愛い。私が好きなのは、
「ガラスに活けた野の花」と「ティーセット」。これが共通してよく出てくる。
そして、「本棚」。
木の香り、背景として、温かみ、豊かさ、落ち着きを出す。
床とか壁とか家具とか、木が多用されているので、それがもうとても大事。
それから、「ベッドの布団」がすごく気持ちよさそう。
一番分かりやすい例が、『くずの葉だより』の105〜106pとか、136pにも。
見てると、寝たくなっちゃいます。
さんさんと射す午後の光、疲れて眠りたいから、ベッド側にだけ
カーテンを引いている。何ともいえない心地よさを感じる。
(「かもめの森」より ©阿保美代1982/講談社)
作品「メロウ・フォーカス」を一例に。
ミソは、まず窓の外に緑がいっぱい見えること。それが平和な感じ、明るさを出す。
そしてこのランプシェードが籐で出来ているんだけど、それがお洒落。
木のベンチが窓際にあるんだけど、これも可愛い。
窓際にベッドがある。これがマットだけの、低いもの。
当時そんなのはあまりなかったはず。普通は枠や足があるけど、それがない。
クッションがいっぱい使ってあるけれど、
当時そんなにクッションがある家ってなかったはずだから、それも洒落てる。
ベッドの上に簡単に板が渡してあって、そこに本や小物が置いてあるのもまたいい。
「メロウ・フォーカス」(p.2〜3の上段)より (©阿保美代 1982/講談社)
窓辺の桟に、小瓶とか、ガラスものが置いてある、いっぱい。それがまた素敵。
最近の雑貨屋さんがやるディスプレイの仕方に共通するものがある。
当時はこういう飾り方はあまり見かけなかったような…。
アボサンはヨーロッパへ旅行されてたようだし、そこで見たものや、
あと欧米の映画の中のインテリアを参考にしているんじゃないかな。
* * *
当時('70年代〜80年前後)の乙女チック路線の人、陸奥A子、田渕由美子らも、
インテリアや小物の描き方がとても丁寧だった。
流行の先端というか、女の子の憧れを的確に取り入れていた。
それを見ると、"乙女チック"の演出には、背景や小物がかなり重要な役割を担っていることが分かる。
洋館とか、板張りの部屋、出窓、アンティーク家具、雑貨、洋服…、
それはその世界への憧れ感を増幅させる。
だけれど、彼女らと阿保美代には明らかな違いがあるような気がする。
"憧れ"という意味では同じなんだけど。たぶん、彼女らの描いたものは日本の流行のなかのもの。
当時日本で流行っていたカントリー調、アイビーファッションなど。
今でもかわいらしいんだけど、今見ると、懐かさや時代を感じてしまう。
一方、阿保美代はヨーロッパ調。
アボサンは今見ても、全然古い感じがしない。
きっとそれは、日本を飛び越えて、海外の文化や雰囲気を
取り入れていたからなんだと思う。
2011.04.24
著者:雪だるま
編集・構成:ライラック