アボサンinfo

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阿保美代さんとは?
アボサンとわたし
 
contents
単行本リスト
作品リスト
          1977〜
陽だまりの風景
ふるさとメルヘン(1)
お陽さま色の絵本
          1981〜
時計草だより
ふるさとメルヘン(2)
くずの葉だより
          1987〜
ルフラン
夏のてじな
          1993〜
森のメルヘン
そよかぜの木
二人でつくる基本〜
 
thought
いろいろ思索
作品レビュー
 
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いろいろ思索 〜阿保美代さんとその作品に〜   


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アボサンへの先入観と評価   


 このサイトを作り始めても、しばらくは、 私はどこかで、阿保美代という人を、甘いメルヘン作家と見ていた。 かねてから抱いていた先入観が抜けきらなかったのだと思う。 そうして、どこかナメているところがあった。

 しかし色々と作品をじっくり見てきて、アボサンは天才的というか、 遥か雲の上の人なんだと感じるようになった。怖いし、遠い。 凡人の私が批評していいのかとも。

 特に凄いのは、'70年代後半〜80年前後の作品群である。 この時期、アボサンは多作で、しかも質も相当に高い。 創作がノッておられたのだろう。 この水準のロマンティック&ファンタジックメルヘンの短篇を、 他に描ける人がそういるとは私には思えない。

 つまり、24年組の巨匠の方々と、このジャンルに限れば、並ぶと言っていいと思う。 私はそれより下だと思っていたが、どうもそうではない。 只ならぬ世界がそこにある。

*   *   *

 先日、「時計草だより」や「くずの葉だより」を再び読んでいて、恐ろしささえ感じた。 「お陽さま色の絵本」や「陽だまりの風景」でも、しばしば同じ気持ちを覚えた。

 例えば、「月夜のちゃわん」という作品。 主人公は、割れてしまった湯飲み茶碗。 その表面に、鞠をつく女の子の姿の絵付けがあった。 カケラとなってゴミ箱に捨てられた彼女は、その現状を嘆き、幸せだった時を回想し、 夜、窓に映る月に問いかける。 それは洗練されたモノローグと、美しく抒情的な絵で表現される。

 ところが最初読んでいて私は、なぜ、"壊れた陶器の欠片"に生命を感じ取らなければいけないのか、 と全くワケが分からない。 しかし絵と言葉に導かれ、少しずつ感情移入して、最後のシーンに行き着いた時、心がゾッとした。

 これは適当に読み流せば、何のこともない作品──甘く切ないメルヘンとも読める。その方が楽だ。 しかしこの世界に入り込むと、私はアボサンの感性と想像力に畏怖を覚えてしまう。 こうしていつしか、阿保美代という人が、巨匠のように見えてきたのだ。

*   *   *

 阿保さんのファンタジー作品の中に、時折、人生や宇宙の深淵を見るような気がする。 それはメルヘン調で包んであるから気付きにくい。 宮沢賢治の童話の中に、狂気を感じることがあると思うが、それに似ている。(?)

 しかしアボサンの国内での評価はあまり芳しいものではない。今や消えそうなぐらいだ。 批評対象としても殆ど挙がらない。 私の目がおかしいのか、世間が未だ気づいていないだけなのか。 知っていても、かつての私のごとく偏見の中にいるのか。

 とにかく、どれかの本が復刊されるか、新たに作品集の一つでも出ないと、 それを打ち破るのは厳しいかもしれない。今の人は触れる機会すらない。

 だから一冊でもいいから、講談社さんに再版してほしいと願う。



2010.07.20
著者:ライラック


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