このサイトを作り、阿保さんの作品リストをまとめていくうちに、
氏の著作活動の全体像が朧ろげながら見えてきた。
さてここで、
『阿保美代・他選作品集』が出版されるとしたら、どの作品を入れますか?
という質問を仮定してみた。
阿保さんの作品の魅力や特質を、今の人にも分かりやすく構成する。
それでひとまず、1977年〜83年の全6冊から選び出すことにした。西欧風メルヘンの4冊から一冊を、
「ふるさとメルヘン」全2巻から一冊を編む。
前者は400p、後者は300pまでとした。
私が独断で選び出したものが以下のリストになる。
* * *
☆ 阿保美代・他選作品集 [1] (仮) 〜ロマンシリーズとファンタスティックメルヘン〜
タイトル | 頁数 | 備考 (登場人物など) |
パウルの誕生日 | 8p | パウルと父親、駅長さん |
緑の雨がさ | 7p | 少年ネムと母。阿保さんが好きな作品 |
小さな二重唱 | 5p | 一羽のすずめとカシの木 |
バクのゆめ | 5p | 月の精とバク。絵の完成度も高い |
とても美しい小さな朝 | 24p | 若い男女リュースとジョゼ。短篇映画のよう |
10月の笛 | 5p | 少年と少女 |
小さな駅にて | 5p | 駅長さんの白昼夢 |
青いらくがき | 5p | 母のいない少年と、友人トール |
いちごパイの夜 | 5p | 男の子と祖母と両親 |
※以上「陽だまりの風景」から69p、ここまで合計 69p |
たいくつな日 | 8p | 留守番の青年と町の人々。デビュー作 |
月夜のちゃわん | 5p | 割れた茶碗と、月の精 |
風の村 | 5p | 旅人の青年と駅長さん |
ぴあの | 5p | ピアノの先生と猫。心に響く佳品 |
峠のあかり | 5p | 少年タムと夜回りのテレンスさん |
てるてるぼうず | 5p | 少年とお天気予報屋さん |
パパのながぐつ | 5p | 少年とブーツ |
おひさま色の子どもたち | 5p | 絵描きのホルムさん |
11月のないしょ話 | 5p | 店番の少女ケイトと女性 |
せめていちニッケル | 12p | 少女メリーと青年トム、人形劇団 |
※以上「お陽さま色の絵本」から60p、ここまで合計 129p |
うたどけい | 7p | 新聞記者ホッホさん |
バビロンまで何マイル? | 7p | ホッホさんと地図屋さん |
風車草 | 7p | ホッホさんと窓際の女性のロマンス |
みずかがみ | 7p | 警官アーヨ&ゴーロ、画家ホラージュさん |
春がすみ草 | 7p | アーヨ&ゴーロ、花屋さん |
サガンさんのこひつじ | 7p | アーヨ&ゴーロ、サガン、羊のブランケット |
幽霊そなた変ホ長調 | 7p | アーヨ&ゴーロ、お化けの子供 |
くれらんぼうさん どじりんぼう | 7p | 子供と、ガラクタ屋のクレランボーさん |
ゆりかごのうた | 7p | 西欧の精霊と村人と詩 |
野原のおまつり | 7p | 南仏風の村のお祭りとロマンス |
まひるが丘一丁目 | 7p | 1/2理論の先生と、助手ジョシュア |
くもりぞら | 7p | ジョシュアと街の人々、先生 |
きらきら星輪舞 | 7p | 先生とジョシュア |
夏星への扉 | 7p | 先生とジョシュア |
いないいない ばあ | 7p | 彫刻家トーレンチカと友人アルフ |
草のたてごと | 7p | トーレンチカ、アルフ、郵便屋フーデさん |
ぽすと すととん まっくらけ | 7p | フーデさんと奥さん、駅長さん |
天使は真昼に笛をふく | 7p | トーレンチカとアルフ |
かげぼうし | 7p | 宿屋のおかみさんと先生 |
緑のおばさん | 7p | 地図屋さん、女性と子供達、アーヨ&ゴーロ |
おおきなトランク | 7p | 駅長さん |
おいしい水 | 7p | トーレンチカとアルフ |
※以上「時計草だより」から154p、ここまで合計 283p |
冬の星座 | 6p | 町人達とクリスマスコンサートの一団 |
小さな魔法の家 | 6p | 幼い子供と父母 |
りんごの木 | 6p | トーレンチカとアルフ |
ごめんなさいの家具屋さん | 6p | 駅長さん、おかみさん、トーレンチカ |
トランペットとすぐりの実 | 6p | 演奏家トール |
わたしの雨色の木馬 | 6p | 女性と青年、ロマンスと別れ |
たくさんのお月さま | 6p | 子供の兄弟 |
エウリディーチェ幻想 | 6p | 汽車内で見た異性への幻想 |
羽根のある美術館 | 6p | ヤンじいさん |
緑のことば | 6p | オーボエを吹く青年と、少女 |
JUNE ─六月の絵本─ | 6p | 夢うつつの幼児と母 |
夏の夜 水の上にて歌える | 6p | プリマドンナ |
かもめの森 | 6p | トーレンチカとアルフ |
涙の乗車券 | 6p | 駅長さん |
10とひとつの物語 | 16p | 2p×7つの月のエピソード、扉1p、幕1p |
月街ものがたり | 16p | 1〜2p×9の月のお話、扉1p、幕2p |
※以上「くずの葉だより」から116p、ここまで合計 399p |
以上、順序はだいたい単行本にならった。
こうして見ると、アボサンはデビューから10年、
コンスタントに質の高い作品を描かれていたことが分かる。
困ったのは「時計草だより」である。収録作品すべての出来が良い上、
全体で村の模様が浮き彫りになるので、約190ページ、殆ど外せない。
またこの時期のアボサンの充実ぶりも凄い。たぶん誰にも真似できない次元の作品群ではなかろうか。
ふわりと、詩的で、哲学的で。創作センスが並外れている。
ところで、「ふるさとメルヘン」の方を集めた一冊だが、
同1〜2巻から8割程を抜き出せば良いため、誰が選んでも大して変わらないと思い、
ここでは省いた。
もし私だったらこれを入れたい、という方がいれば、
ご自身でまとめてみてください。人それぞれ選出は異なると思います。
またその作業の中で、きっと、阿保作品に対する見方も深まるはずです。
とはいえ、阿保さん御本人による『自選作品集』も見たいですね。
2010.07.19
著者:ライラック