なかなかの力作。表紙だけを見て、料理本に阿保さんのマンガが少し添えられている程度かな、と想像していた。
実際にはそうではなくて、料理本をコミック化するための原作があり、
それを元に阿保さんがほぼ丸ごとマンガにしている。全247ページ。
元は、新婚女性向け月刊誌の連載だったようだ。
それを一冊の本として再構成、料理に合わせて章立てにし、コツやおさらいのコラムが1ページ加わる。
原作は、NHKの放送作家、重金碩之氏。前書きに早見優さん。
ストーリーは、銭湯の家に嫁いだ新婚ホヤホヤの妻が、義母や周囲の人々に助けられながら、
様々な料理を学んでいくという筋立て。
ページからは明るさが漂い、爽やか。
主な登場人物も6人+1匹いて、それなりにドラマがある。エキストラも様々。人も良い。
バブル後の、少し落ち着いたが豊かな時代を感じる。
ひじき、揚げ豆腐、ぬか漬け、鍋物など、仕込み手順から描かれた多彩な調理のイラストも、
その道の人には勉強になるかもしれない。'80年代のアボサンの幻想的な絵ではなくなっているが、
これはこれで良質なものだと思う。
この本は台湾でも翻訳され出版されているようだ。
恐らく日本料理を学ぶため、というよりも、「新妻が奮闘するストーリー漫画」として読まれているのではないか。
料理を絵にするのは大変だろうに、しっかりと描かれていて感心してしまう。
'90年代半ばにはマンガを離れたように見えた阿保さんが、
実は精力的に仕事をされていたことを知り、嬉しい気持ちになった。
(by ライラック)
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